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ニュースレター
2016/09/28

ターニケットによる受傷現場での活動性外出血の止血

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ターニケットによる止血は古代ローマに始まり、一時期使用されないことが近代にあったが、戦場では使われ続けてきた。現代にいたり、IED(Improvised Explosive Device=即製爆発装置) の出現は損傷パターンと戦場トリアージを変容させ、軍では気道管理の前に大量出血の止血を最優先とした。軍は兵士用ファーストエイドキットにターニケットを追加装備し適切な使用方法のトレーニングを義務付けた。

この受傷パターンの変化は同時にターニケットの研究を進め、ある研究では戦傷死の57% は「防ぎえた死(Preventable Death)」だったことが判明した。別の研究ではショック発症前のターニケット装着が生存の可能性を向上させるとし、さらに、合併症の報告がわずか1.7%の神経麻痺のみだったことから、ターニケット使用の不安は軽減された。並行して、民間でも研究も行われ、低い合併症率と高い使用効果から、ターニケットの積極的な早期使用の勧告がなされた。2012 年には、大都市圏では、救急車にターニケットを備え、救急サービス隊員へ適切な使用方法のトレーニングを始めるところも出てきた。

軍のプロトコールを民間の救急医療に導入することは、長年行われてきたことだ。民間のファーストエイドにおいても、早期の出血制御のためのターニケットの使用と教育は、中核とすべきことだ。国内でも銃の暴力や爆発物による戦場のような四肢の損傷は増加している。2013 年4 月15 日のボストンマラソンン爆破事件はその脅威を明るみし、まさしく民間人のMCI(*1)(Mass CasualtyIncidents)となった。それと同時にターニケットの準備と使用に欠陥のあることが判明し、軍事救急から民間救急への止血プロトコールの移行の遅れを露呈させた。

この問題解決に向けて、2013 年4 月には、出血死を防ぎ、サバイバビィティーを向上させようと、国家政策作成のための合同委員会が開催され、「ハートフォードコンセンサス(*2)」が発表された。その核心として、早期の出血の制御を、ファーストレスポンダーへ義務付けた。そのポリシーは、ファーストエイド用具とその使用に関する教育を、一般人、ファーストレスポンダー、EMS 隊員に対して強化することを示している。特に、ターニケットと止血ドレッシングは、EMS システム( 救急医療体制)のどこででも利用できるようにしなければならないとしている。

これに基づき、2015 年11 月から2016 年2 月にかけて、以下の質問を提起し、世界のメジャーなEMS 機関に対してターニケット使用の現状を調べた。
●救急車両にターニケットを搭載しているか。
●ファーストレスポンダー車にターニケットを搭載しているか。
●そのターニケットは市販の製品か。 それとも、即席でその場で作ったものか。
●市販の製品ならば、そのブランドは何か。

米国、カナダ、イングランド、ニュージーランド、オーストラリアで、人口8000 万人以上をカバーする70 の救急サービス機関の救急サービス部門から回答を得た。基本的に消防車両を含めすべての救急車両に市販品が搭載されていた。一部の地域においては、警察車両にも同様に搭載しているところもあった。また、一般市民に対して、ターニケットの使用方法のトレーニングを実施する地域あった。使用ターニケットは、NAR(North American Rescue) 社のCAT=43、TMS(Tactical Medical Solutions) 社のSOFTT=7 であった。

この調査研究の焦点は外傷による出血をコントロールされない受傷者だ。一時的あるいは一部分の止血には、直接圧迫止血・プレッシャーポイント止血・出血部位を心臓より高い位置に保つ挙上がある。しかし、四肢の切断や爆裂片による大きな損傷では、血流の閉塞が必須である。戦場や市街地での爆発物による損傷は、往々にして生命を脅かす四肢の損傷となる。かつてターニケットは止血の選択肢の最終オプションであった。しかし、四肢の止血による救命は、ターニケットの潜在的なリスクを遥かに上回るのである。

こういった救命のための情報と技術は、広く伝えなければならない。特に安全に関わる公共の職員、最終的には一般市民に伝えなければならない。これらを広めるために、第1 に止血方法を教育するための標準化された病院前救急処置のガイドラインを作成すること、第2 に公共向けの教育プログラムを開発し普及させること、そして一般市民が使える救急用具を提供することが必要だ。「止血しろ(Stop The Bleed)」は、受傷者を直ちに救命するため国家プログラム(*3) で、止血法のトレーニングとターニケットの支給を含んでいる。各種組織と企業40 カ所が「この新しいプログラムに参加しサポートしている。活動性出血は差し迫った脅威だ。大量の外出血による死亡や四肢を失う危険を防ぐためには、救急サービスのみならず市民の参加が求められる。

*1「 止血の要点」- AccordNews07, 2016/8/19(MCI=Mass Casualty Incidents)
*2 Hartford Consensus - 多数殺傷事件から生存性を高めるための戦略
*3 US Department of Homeland Security アメリカ国土安全保障省
( JEMS April 2016, P.45-47 The Role of Tourniquet in The Field より抄訳 )

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