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ニュースレター
2016/11/29

NO.29 バイスタンダーをEMSの増援に - Bystander Response

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街に川に海に山に、自然災害から犯罪に至るまで社会の脅威は広範で複雑化している。現状では大規模で深刻な事件への標準的な緊急対応は、公共安全機関が専門技術で対応するという概念に固執している。しかし、医療的な見地から見れば、救急医療システムがいつでも即座に対応できるというコミュニティー全体の依存が、潜在的な危険を生み出している。こうした過剰な依存は、コミュニティーの中でどんなことが起こっても何とかなるだろうという、独りよがりな先入観に繋がることがあまりにも多い。残念なことに救急医療システムはいつでも即座に対応できるわけではなく、一連のケアに遅延や支障が起こすこともある。こうした見地から、この論文は複雑で深刻な多数の負傷者が発生する事件に対応する緊急医療のこれまでの枠組みは、再考されるべきという立場に立っている。

バイスタンダー

過去数年間の報道記録に見られる通りアメリカのみならず各地で残忍な市民銃撃事件が多発している。コロラド州オーロラの映画館での銃撃事件、オーランドでのナイトクラブ銃撃事件、ボストンマラソンの爆裂事件、ロンドンの地下鉄爆破事件、テキサス大学の銃撃事件等々。これらの事件では、バイスタンダーすなわち偶然その場に居合わせた人々が、パニックに陥ることなく見知らぬ他人を救助し、負傷者を退避させ自ら救命救助に参加協力している。このような予期せぬ災害の時の勇敢なバイスタンダー達の行動を分析すると以下の共通項が見えてくる。

  • バイスタンダーには自発的な人もいる。積極的な人もあればそうでない人もいる。
  • ほとんどのバイスタンダーは応急手当のトレーニングを受けていない(*1)。医師/看護師でもトレーニング受けていない限りは救急現場では多くを期待できない。
  • ほとんどのバイスタンダーは特別な知識がなくとも呼びかけに応え、行動する。
  • バイスタンダーはあらゆる人種・民族・性別・年齢にわたる。
  • バイスタンダーが受傷者を助けられないほど負傷していることはない。
  • バイスタンダーは自らの意思でそこにいるのではなく、たまたまい合わせただけだ。
  • バイスタンダーは、事件/災害発生の現場にいる唯一の潜在的な救護隊員だ。公共のファーストレスポンダー(*2)が駆け付けるまでには時間がかかる。
  • 特に受傷者の多数発生したMCI(*3)ではバイスタンダーは重要な人的資源だ。もともと、負傷者全員を即座にケアできる専門的なファーストレスポンダーの数は充分にはいないのだ。

TECC

近年になり市民の救急救命参加が勧告され、止血を優先した外傷ケアガイドライン・ハートフォードコンセンサス(*1)が発表された。そうして、軍用の標準戦闘外傷ケアTCCC(Tactical Combat Casualty Care)(*4)をもとに標準救急外傷ケアTECC(Tactical Emergency Casualty Care)(*4)が編纂された。TECCは、戦場での負傷兵の生存率を上げるために作られたTCCCのプロトコールを流用し、民間における暴力事件や大量死傷事件のプロトコールに適用させたものだ。しかしながら、民間の外傷ケアと戦場での軍事医療対応とでは細かな点で異なってくる。TECCは科学的な根拠に基づいて、民間のオペレーションや地域社会の特性に合わせるために、民間のファーストレスポンダーによって設定され、専門家のコンセンサスを得た医療手当のモデルである。TECCは急速に広まり、警察や消防署、山岳救助、民間救急医療サービス等々、大規模な事件で外傷医療手当ケアの標準となっている。

ファーストレスポンダー

TECCガイドラインの理想的な施行は、予期せぬ災害に対応する全ての機関において組織的に行われることだ。その結果、TECCの「生存の連鎖」は、バイスタンダーから医療提供者でない警察機関のファーストレスポンダーへ救急隊のファーストレスポンダーそして外傷センターの最初の受け入れ者へと、全ての潜在的な医療提供者をリンク(結びつけることが)できる。連鎖の中でリンクとなる人員のできる範囲の適切な処置が定められ、互いに依存し合いながら、患者を順々に先へ進めていく。TECCの連鎖の最初のリンクは「ファースト・ケア・プロバイダー(FCPs)」と呼ばれる。理想的には、たまたまその場にいたバイスタンダーがFCPsとして、その場でケアを始めるのが望ましい。
ファースト・ケア・プロバイダー(FCPs)の概念は、専門的な救急医療の人員不足などで手当を行えない不測の事態に備えて作られた。これは、バイスタンダー主導の総合的なトラウマ・プロトコールとして、バイスタンダーの救急ケアの技量と物資の限界を考慮し作成された。FCPsのトレーニングは外傷の出血コントロールだけではなく、防止可能なすべての死亡要因(Preventable Death =プリヴェンタブルデス)を網羅する包括的な方法を採用している。

結語

実質的で地域社会に密着した災害救命救急プログラムには、1)行政側の投資、2)資器材の準備、3)包括的なFCPsのトレーニング、が不可欠だ。一般人が公共の場ですぐに使える救急資器材は、街の安全を守るための多面的な取り組みの一つである。これは、何かあった時に必要な資器材を提供するだけでなく、いざという時に行動を起こす視覚的な手掛かりになるだろう。すぐに使用できる資器材を準備し見せておけば、常に目に入りファーストケアの認識を高めるのに役に立つだろう。資器材の位置を示す表示は、すでに行われているAED・消火器や非常口のサインと同様にするのがいいだろう。
しかし、プログラム導入の最も困難な障害は、現状からの変革を嫌うことだろう。地域社会と公共の安全の指導者は、これまでの119番通報への絶対的な依存を克服し、救急医療政策の導入や多くの人々に救急医療の権限を与えることを躊躇してはならない。一旦トレーニング受ければ、FCPsは自立的に行動し、人命救助に力を尽くすものだ。
(JEMS August 2016, P.32-35  BYSTADER RESPONSE より抄訳 )

参考一覧

*1ハートフォードコンセンサスと市民の救急参加=AccordNews27 2016/9/27参照
*2ファーストレスポンダー(First Responder)=第一救助者/一時対応者とも呼ばれる(救急用語事典)。
*3MCI(Mass Casualty Incident)=救命対応能力を超える受傷者の同時多発AccordNews07. 2014/8/19参照
*4TECC標準救急外傷ケアの進化と脅威に備える必要性=AccordNews14. 2015/9/25参照