人類はどの民族も、体の変調に対して「温めたり・冷やしたり」して回復を図ってきた。「温めたり・冷やしたり」が「自然治癒力」を助けることを知っているからだろう。
家庭で家族みんなの健康を管理しているお母さん方と、忘れかけていた「温める」療法について、もう一度考えてみたい。
温熱療法は昔から生理学上の効果を循環系、神経系、運動器に及ぼすものと知られ、洋の東西を問わず医療や保険の現場、リハビリ施設や家庭でも利用されてきた。
局所に対する温熱療法は、組織の新陳代謝を活発化させ血管を拡張させることによって血液循環を改善し、増加した血液は患部から余分な物質を運び出す。温熱は筋肉の収縮・緊張をほぐして無理なく伸長できるように助けるうえ、感覚伝達システムに作用して痛みを減少させる。こういった効果は関節の故障、肩こり、腰の痛み、筋肉痛などに応用したときに顕著に現れる。
どんな温度でも、乾いた熱さよりも湿った温かさのほうが熱の浸透性が高く、したがって短時間に高い温熱効果を得られやすいことを、人々は「温湿布」で経験的に知っている。温熱療法、特に温湿熱による皮膚刺激は同時に心身のストレスのバランスを改善するので、心身をリラックスさせ快眠を促して日々の活力を生み出す助けになるであろうと理解できる。
さらに、先で延べた首・肩こり、腰痛などの「日常的な痛み」に対する効果を加えて、内科的な観点からこの温熱療法を考察すると、皮膚に温熱刺激を与えると皮膚が充血し、そこに関係のある臓器の炎症が引いたり、変調が戻ったりすることがわかる。
現代医学の治療にあっても治す基本は、自然治癒力を助けて治癒を促すことである。例示した温湿熱療法は、自然治癒力を助けるものであって、何の副作用もない。
「温める」療法の中でも、一般的に言って湿った温かさのほうが熱の浸透性が高く、気持ちがよくて心理的にも受け入れられ易いことは入浴の知恵が教えてくれている。
「気持ちよい」ということはとても大切なことで、「治る」に通じているのである。
温湿布に代表される「湿った温かさ」の良さについて付言するならば、乾熱は局部における汗の蒸発を誘い、汗の蒸発は気化熱を必要とし、これを皮膚から得ようとするので皮膚温の上昇は湿熱ほど効果的ではない。従って、皮膚と皮下温度の上昇を維持するためには熱浸透効率の高い温湿熱のほうは良いわけだ。